一難去って また一難、ロイズ銀行グループ
(以下 ロイズ と略して書きます)にとって今年は厄年かも しれません。数日前に
ロイズ銀行に関する記事を書いたら この銀行に関する質問を匿名で下さった方が おられます。たぶん 同様の質問をしたい方が他にもいらっしゃるかもしれませんので 記事にしました。質問内容は
恐縮ですが質問させていただいてもよろしいでしょうか? ロイズ銀行、東京支店が今現在、口座を持っている人を対象に円定期預金の勧誘を行っています。預けようと思っているのですが預金保険の対象外ですので満期1年以内に倒産するような事態にならないか不安があります。政府が倒産はさせないだろうとの銀行の方の説明でしたがそのようにお思いですか? お考えをお聞きしたくてメールしました。よろしくお願いします私個人の意見で恐縮ですが 満期1年以内にロイズが倒産する事態は考えていません。じゃぁ 2年、3年後なら倒産もあり得るのか と聞かれれば 答えは 「NO」ですが ロイズという銀行が 再編成を通し 形を変えて業務を継続する可能性は非常に高いという意見に落ち着きます。(あくまでも 私個人の意見ですので 誤解のないよう お願いします)
先週 ロイズがストレステストの基準を満たさなかったという報道が出る数日前の事ですが、欧州委員会の競争当局委員長が 「ロイズに ハリファックスを切り離し 売却せよ という勧告をした」 と 英タイムス紙が報道しました。これについて 私が知っている限りの事をお伝えします。
日本に住んでいれば 英国の銀行事情など知る機会もないので 「ロイズ銀行の話しなのに どうして ハリファックスなんだ?」という素朴な疑問が湧いてくると思います

ロイズ銀行グループは 前の記事にも書きましたが 最初 ロイズ銀行 としてスタート

1995年 Cheltenham and Gloucester住宅ローン組合 と TSBグループを合併して ロイズTSB銀行となった

今年1月 HBOS (ハリファックス住宅ローン組合と BOS バンク オブ スコットランドが合併して HBOSとなった)の買収が成立し 晴れて ロイズ銀行グループと なりました。
英国では 住宅ローンを組もうとする人が真っ先に頭に思い浮かべる名前は ハリファックス、アービー(つい最近まで アービーナショナル という名前でした) 又は ネーションワイド住宅ローン組合のいずれかと思います。英国の住宅ローン全体の20%強を占めるハリファックス。今年 ロイズTSBがHBOSを買収して ロイズ銀行グループとなってからは 英国住宅ローン全体の30%を占めるまでになりました。
住宅ローン以外では 普通預金/貯蓄預金 英国総額の50%、英国口座数全体の25%を ロイズは有しています。
どうして ロイズに ハリファックスを切り離し 売却せよ と勧告したのか 理解出来なかったので、EU競争法について いくつかググッて調べたところ その理由が おぼろげながら つかめてきました。
競争法の中に SMP (Significant Market Power) 有意な市場力評価のガイドラインというものが存在し その中に 単独支配性評価基準(市場シェア等)というものがありました。その基準として
25% 市場シェアで支配的地位 認められず
40% 市場シェアで支配的地位 懸念が発生
50%超 例外的な支配的地位存在が認められる
つまり ロイズは 英国内の普通預金/貯蓄預金全体の50%を占めているので 単独支配性評価基準の スゲェ~~~ ヤバイ

ところまで 来ちゃってるという事のようです。
やばい という事は分かりました。それなら 切捨て部分として ロイズの中からわざわざ「ハリファックス」を 選んだのか?という疑問に関しては 私は確固たる答えを用意していません。単なる予想で恐縮ですが ハリファックスがBOSと合併する時点では ハリファックス<銀行>でしたが その前身は 住宅ローン会社です。一般的に 住宅ローン会社は 普通の銀行よりも 貯蓄預金金利が高めなので ハリファックスは銀行となった後も 住宅ローン会社時代から築き上げた住宅ローンと貯蓄口座を継続保有しており マーケット シェアーは依然 高めでした。つまり ハリファックスを切り離せば ロイズの普通預金/貯蓄預金と住宅ローン 両方のマーケットシェアーが 低くなり 一石二鳥

である という結論を出したのかと思います
ご興味のある方もいらっしゃると思うので
EU競争法のリンクを載せておきます。
しかし 欧州委員会の競争当局に なんだかんだ言われる前に 英国には 競争法が存在しないですか?

存在するなら どうして ロイズがHBOSを買収する時に ストップが かからなかったのでしょうか?

という当然の疑問が湧きますよね。
最初の質問の答えは 「あります」。英国は すべての商業活動における公正競争を促進する目的で 1998年に競争法を成立させました。大雑把な内容としては
反競争的な協定、決定 もしくは共謀的行為
*英国における競争を阻害し 抑制し または歪めるような目的もしくは効果を有し、英国内における取引に影響を与える、企業間の協定、企業の団体による決定、もしくは共謀的行為の禁止
*ある協定は たとえ 明らかにされていなかったり、公然としたものでなくとも、反競争的である可能性がある。この禁止規定には一定の除外と免除が適用される
支配的な地位の濫用
*英国の市場において支配的地位の濫用につながるような、そして 英国内の取引に影響を与える 1もしくは複数の企業による行為の禁止
*支配的な地位を占めることは 禁止されていない。禁止されているのは 支配的地位の濫用である
2番目の答えは 「ある意味では ブラウン首相がお膳立てした合併なので 例外として 競争法適用除外が暗黙の了解として認められた」

というのが 一般的な見解のようです。タイムス紙だか テレグラフ紙だかが 今年1月に両行の合併が成立した時 合併に至るまでの舞台裏を記事にしたのですが 両行の頭取達が密室で2日間に渡り 合併条件について話し合った際 英財務省高官が 両行の合併に関しては 競争法適用除外する旨を わざわざ 通達しに来たと書いてありました

果たして この報道が事実かどうかは 私などの一般ピープルに分かる筈がありませんが あり得る話しだなぁ と思ったりもしています
もし 欧州競争法当局の勧告通り ロイズがハリファックスを切り離さなければならなくなった場合 ブラウン首相の面目丸つぶれになります。
話しが ダラダラと長くなりましたが 頂いた質問に関しては ロイズが倒産する事は 今の時点では 考えられないというのが 私のお答えです。ちなみに 現在 RBS銀行は70%、ロイズは43% それぞれ 公的資金が注入されていいます
この記事がお役に立ちましたら 欲張り3段攻めポチッ御願いします!
最初は
人気blogランキングへ 次が
最後が
こんな嬉しい賞を頂きました。受賞に恥じないよう 頑張ろうと思います。応援 よろしく!