イギリスに住んでいる人にとって (クリスマス辺りから)よく耳にする言葉があります。ノーザンロックよりは頻度が少ないですが 最近 特に耳にする機会が増えました、それは non-dom (non-domiciledの短縮型)という言葉
私は不動産に興味があるので タイムス紙日曜版の不動産セクションを片っ端から読むのですが、そこでも このnon-dom という言葉が頻繁に使われています
*non-domとは?non-domiciled、つまりイギリスに住んでいる外国人労働者
ps:スーパー・リッチから 出稼ぎ労働者まで含むが、新聞記事になる場合は スーパー・リッチ層を指す場合がほとんど
*non-dom扱いとは?英国で得た収入に対しては 英国での納税義務があるが、英国外での収入、財産、預金金利収入に対して納税義務が免除されている人達
私 税金の事なんか 全然知識ないのですが ざっと調べたところ G7諸国で こういう納税義務免除がある国は 英国だけみたいですね。
*non-dom扱いの人達に 何が起ころうとしているのか?ダーリング財務相は 昨年秋にnon-dom扱いの人達を対象にした新税案を提出。その内容は 過去10年のうち 7年以上 (2001年4月5日以前から)英国に滞在しているnon-dom扱いの人達は、今年4月6日以降 一律年間3万ポンドのnon-dom新税の支払い義務が生じる。同時に 英国外に保有する財産等の明細提出も義務付けられる
昨年秋に この新税案が提出された時には 新税は過去にさかのぼって適用、つまり 3万ポンド×7年分=21万ポンド(約4,200万円)の税を課される

という内容でしたが、先週2月12日に 過去にさかのぼる事はない と 内容変更したみたい

です。それに加え <明細提出義務>も 却下されました。抵抗が強すぎましたね
そもそも このnon-dom新税案は 野党・保守党が 昨年秋の党大会に披露した新案だったんですよ。ところが 保守党大会の翌月に 突然 労働党が内容を少しだけ変えて non-dom新税案を提出

。野党・保守党が この新税案を出した最大の理由は 通常 英国人は40%の譲渡所得税(キャピタルゲイン税)支払い義務があるのに、non-dom人達は 10%なんです。スーパー・リッチな人達は この破格のキャピタルゲイン税率に吸い寄せられるように英国在住を決め込んでいる これは けしからん というのが そもそもの始まりだったようです。
*non-dom人口は どのくらい?昨年時点で 推定 11万6千人とされている
ps:2006年の数字で恐縮ですが、このnon-domの人達が2006年度 英国政府に支払った
所得税額 40億ポンド
消費税(VAT) 30億ポンド
英国GDP寄与額 推定 120~230億ポンド
(non-dom人達による)不動産取得に関わる手数料収入 3億ポンド
英国労働人口の10%が このnon-domの人達に支えられていると聞きました。みんながみんな スーパー・リッチな訳ではありません。
*世界の金融センター・シティーの運命は如何に?この新税は 金融センターとしてのロンドン・シティーの存在をも危うくする危険性を持っています。その理由は シティーにある投資銀行・プライベート エクイティー会社・ヘッジファンド等で働くManaging Director以上の地位を持つ人達の間で non-dom比率が異常に高いからです。例を挙げますと
ブラックストーン 84%
TPGキャピタル 77%
KKR 75%
PC パートナーズ 47%
Carlyle's 46%
ロンドンにあるヘッジファンド業界の35%が non-dom扱いの人達だそうです。
KKRは この新税が施行された場合は 事務所を英国外へ移転すると決定。行き先は定かではありませんが、一番 距離的に近くて好まれる場所は スイス、その次が ドバイ そして シンガポールの順になっているようです。
米系投資銀行の一部では 給与・ボーナスに加え 新税支払い手当て 3~5万ポンド(新税は一律3万ポンドですが 夫婦共働き家庭では 6万ポンド{一人に付き 3万ポンド}になる為)を支給する事を検討しているそうです。
どうして 今日 わざわざ non-dom新税案の記事を書いたかと申しますと これには 秘密

があります
なんと ノーザンロック・新CEO サンドラー氏が non-dom扱いのオッサンだったんです。生まれは ジンバブエ、パスポートは ドイツ と きました! この事実は 昨夜 発覚しちゃったみたい

ですね。政府も 焦ってたのか知りませんが 悪い事は重なるという見本みたいな事実ですよね、これは.........サンドラーおじさんの給料 いくらだか御存知ですか?月額9万ポンド(1,800万円+)年収 108万ポンド(1億3千万円+) なんですか、この高額な給料は?
一ヶ月9万ポンドという桁違いのお給料を頂くサンドラーさんにとって 3万ポンドのnon-dom新税支払いは全く問題ない筈です。しかし 今 イギリスで注目を集めている2つの話題(ノーザンロック と non-dom新税)が サンドラーさんに集中してしまったので イギリスのマスコミは 俄然 元気(?)付いてしまいました!

為替には直接関係ありませんが、イギリスの金融センターとしての役割を占う上でも シティーの今後からは眼が離せません。
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新CEOがなにを隠そう・・・って笑えないオチまで付いちゃって
N20さんの記事で、イギリスがとても身近に感じられます
ますますポンド好きに・・・おっと危ないです
体調にお気を付け下さい