欧州中銀(ECB)が昨年12月より新たに導入した3年物無制限資金供給オペ(LTRO)。
第一回目のオペでは約4,892億ユーロという額の資金を500以上の欧州系銀行が受け取りました。次回は2月29日に実施されますが、果たしてどのくらいの金額になるのでしょうか?
*2倍になるという予想昨日ロイター社がエコノミストを対象にして行った調査によると、2月29日のECB・3年物LTROによる資金供給規模は、1回目の4,892億ユーロより低い3,250億ユーロくらいになるであろう という結果が出ました。
しかし本日の英FT紙によると、次回は1兆ユーロ つまり一回目の4,892億ユーロの約2倍の規模になる可能性が指摘されています。その根拠となっているのは、FT紙が欧州系大手銀行数行に対して行った聞き込み調査によるもので、それらの銀行全てが次回2月のオペでは初回受け取った金額の2倍~3倍規模の資金を受け取る用意があることを示唆したからだそうです。
米ゴールドマン・サックスは顧客向けレポートで既にこの可能性を伝えており、1兆ユーロ規模になる可能性が非常に高いとしています。
ECBの

ドラギ総裁も「2月のLTROは相当多額の資金供給となるであろう。」と語ったともされています。
*受け取った資金の行き先1)銀行が発行した債券の償還分昨年12月にこのブログに書いた記事からの抜粋になりますが2008年9月に起きたリーマン・ショックの時、資金調達目的で銀行は債券を発行した
その時発行された債券は3年物が多かった
2012年に大量の償還を迎える
具体的な数字を挙げると、来年第1四半期には2,300億ユーロ前後の銀行債が償還を迎える見込み
今回の3年物オペの一部はこの償還資金に充てられるのか?今年第1四半期には2,300億ユーロ規模の銀行債の大型償還が控えています。ユーロ圏債務危機問題の悪化を受け欧州系銀行の格下げが相次ぎ、それらの銀行が償還資金を手に入れるために市場で債券発行出来る地合いではありません。そのため、この3年物LTROから入手した資金を償還に充てるという意見
2)キャリー取引3年物LTROは1%固定金利なので、この資金でPIGSが発行した国債(短期債が中心)を買い利ざやを抜くであろうという意見

これが継続すれば、PIGS各国の借り入れ金利が低下し、ユーロには好材料となる
3)企業への貸付に廻るECBによる豊潤な資金供給により、企業への貸付がより一層やりやすくなったという意見。そして1%という低金利で借り入れるので、企業への貸付による収益率が非常に良いという利点もついてくるようです。
*3年物LTROは本当に万能薬なのか?なんだかいい事尽くめのLTROですが、問題点はないのでしょうか?
1)ドラギ総裁の言葉"So we know for sure that we have avoided a major, major credit crunch, a major funding crisis ... Do we know that actually this money is going to finance the real economy? We don't have evidence of this yet. We have to wait. There is a lag. In the meantime, you have parts of the euro area where credit is more or less normal. You have (other) areas where credit is seriously impaired."
(12月の3年物LTROが好調であったお陰で、欧州系銀行を取り巻く)信用収縮や資金供給危機を避けることには成功した。それでは、そこで得た資金が実体経済の資金繰りに役立っているのであろうか?それを示す証拠はまだ見えてこない。時間的なタイムラグがあるので、待たなければならない。とりあえず言える事は、資金繰りが逼迫している地域もあるであろうが、ユーロ圏に限って言えば正常に近いところまで回復している

この言葉からも判るように、企業への貸付などに資金が廻っているのかを確認するには、まだ時間がかかるようです。
2)ECBのバランスシート拡大に対する懸念担保付融資の部分が大きいので心配する必要なしという意見もありますが、今後も欧州債務危機の継続や欧州だけでなく世界的な景気減速が顕著になれば、ますますバランスシートの拡大は避けられません。
3)延命措置に過ぎない誰がなんと言おうが、この3年物LTROは市中から資金繰りが難しくなった欧州系銀行の資金繰りを容易にするための延命措置である点は全く変わらない。いつまでもこの延命措置を続けている限り、銀行は自力で生き延びる努力を怠ってしまうのではないか?という危惧
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