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頂いたご質問への答えとメルケル首相発言

4時間かけて物凄い大作の記事を書いたのですが、全て消えてしまいました 
まだかなりの部分を覚えているので、ざっと書き直しますね。



こんなに遅くなってしまいましたが、コメント欄を通じてHimobakaさんからこのような質問を受けましたので、それに対するお答えです。頂いた質問は 

解説をお願いいたします
早速ですが、このスイス中銀のニュース、よく解りません。
これは、対ユーロにおいてスイスフランはペッグ制を採る、という意味なのでしょうか。つまり、スイスとユーロ以外の他の通貨との関係は、ユーロドルなどに準ずる、という意味なのでしょうか。
こんな事が出来れば、円なども対ドルで最低為替レート設定できるのでしょうか。
ともかく、スイスフランがデンマーククローネなどのように当局の監視通貨という事になれば、暫定避難通貨は英国ポンドになるのでしょうか。 いろいろ質問してしまい恐縮ですが、よろしくお願いいたします。


私自身、ペッグ制という言葉の厳密な意味が分かっていません 。 なので頂いたご質問に対し偉そうに「回答」する立場にはありません。ただ私なりの解釈をここで書かせて頂けたら幸いです。

*変動相場制と固定相場制

現在ほとんどの国は変動相場制を取っており、毎日相場は激しく動いています。しかし一部の国では、完全な固定相場制 (サウジアラビアなど) や上下の変動幅を設定したペッグ制 (香港など) を採用し日々の為替変動を最小限に抑えています。
Peg ccy Sept 11
(クリックすると拡大します)

このチャートですが、最初のものはサウジアラビア・リアルの対ドル・チャート リアルは1米ドル=3.75リアルに固定する相場制を採っています。

2番目のチャートは、ドル/香港ドルのチャート 香港ドルは米ドルにペッグしており、中心レートを7.80 (チャート上の黒い横線) に設定し、変動幅を7.75~7.85に設定しています。つまり7.75より香港ドル高になった場合にはドル買い/香港ドル売り介入を、7.85より香港ドル安になった場合にはドル売り/香港ドル買い介入を実施し、香港ドルの価値を一定のレンジ内に収めています。

今回スイス中銀が発表したものは、スイス・フランが対ユーロに対して1.20よりスイス高になった場合は、無制限のスイス売り介入を実施  するという「1.20フロアー制」導入と私は理解しています。ニュースや新聞報道で「スイスが対ユーロのペッグ制導入」という書き方をしているものを見かけますが、厳密な意味では今回の措置はペッグ制とは言えないと思います  その最大の理由として、例えば米ドルに対するペッグ制を導入した場合、米国が政策金利を上げれば、ペッグしている国も国内の経済状況にかかわらず米国に追随して利上げに動きます。今回のスイスの措置は金利面での動きは全く連動していません。そして香港ドルなどとは違い、対ユーロでのスイスの下限は設定していません。言い換えれば、スイス中銀は対ユーロを「一定の範囲に収めたい訳ではなく、あくまでも1.20以上のスイス高を避けたい」だけでしょう。

*最低為替レート設定が可能であるのか?

私は為替制度の専門家でも何でもありませんが、もしある国が本気で最低為替レートを設定したければ、それを止めることは不可能だと思います。例えば日本が「対ドルで円の上限を75円で設定する」としたければ、いつでも出来ると私は理解しています。

それではどうしてそういう設定をしないのか?それはそれを維持する代償の大きさ  でしょう。

現在市場の一部では、スイス中銀が1.20を死守するには最低でも1兆ユーロ規模のユーロ買い/スイス売り  を継続しなければならないと噂されています。では最悪の事態が発生  したと仮定した場合、1兆ユーロ使っても1.20を守りきれず、スイス高がどんどん加速してしまったらどうなるのでしょうか?スイスの経済規模は約5,500億スイスです。1兆ユーロ規模の介入を実施したと想定した場合、スイス中銀の介入による為替損失額を計算すると

10ポイント(1.2000が1.1990へ)動いた場合、損失は10億フラン
100ポイント(1.2000が1.1900へ)動いた場合、損失は100億フラン
1,000ポイント(1.2000が1.1000へ)動いた場合、損失は1,000億フラン   スイスGDP規模の2割の損失 

これはあくまでの私の想像ですが、いかなる理由にせよスイス中銀が1.20死守を放棄してしまった場合、スイスに与える悪影響は為替損失だけでは収まらないでしょう。
・守れもしないフロアーを設定したことに対するスイス中銀のCredibility (信用性)の損失
・為替相場に於ける介入の限界
・1.20を守りきれなかったので、次のフロアーがどこになるのかを探る為に市場参加者は今までにも増してスイス買いを加速させる

こんなことがパッと頭に浮かんできました。
スイス中銀はここまでの危険性を覚悟  で、今回の決定に踏み切ったのです。もし日本も本気の覚悟があれば、いつ同様の発表があってもおかしくありません。

*避難通貨

このブログでも何度か書いていますが、スイスに代わって浮上してきた避難通貨はノルウェー・クローネ。ただマーケットでの流動性はスイスと比べて断然少ないので素人向きではないと思って私は取引していません。

*面白い報道

たまたま米WSJ紙を読んでいたのですが、面白い記事を発見したのでここで紹介します。それはスイスがユーロに対してフロアー制を導入したことに対する独メルケル首相の発言でした。私自身はこの発言は聞いていませんが、WSJ紙によると

"Neighbouring Switzerland had de facto pegged its currency to the euro. The strength of Switzerland becomes its own weakness if it doesn't fit into the whole global structure. That's the lesson. And because of that the euro is right,"

直訳すれば

「お隣のスイスはユーロに対し事実上のペッグ制(連動性)を導入した。スイスという国の強みは、世界的構造変化に適応しなければ、それが自国の弱みとなる性格のものである。それがスイスが学ぶべき教訓であり、それゆえユーロという通貨は正しい道を歩んでいると言える。」

何を仰っているのか私には分かりません 

繰り返しになって恐縮ですが、今回のスイス中銀の発表は

1)厳密な意味でスイスはスイス・フランの対ユーロ上限を設定しただけでありユーロに対し連動すると発表していません。金融政策に関しても全く連動させていません。

2)スイス・フランの対ユーロ下限も設定していません。

3)スイスが今回の措置導入に踏み切った理由は、ユーロ圏加盟国のギリシャで債務危機  が表面化した2009年以来、スイス・フランは対ユーロで約35%スイス高になり、スイス高の影響で同国経済が崩壊寸前まで行ったため  くどいですが、このスイス高は決してスイス経済が奇跡的な発展を遂げたからではなく、ユーロという通貨を保有することに危険性を感じた  世界の投資家達がその資金をお隣の安全な国:スイスに移動させたため

4)絶対に間違っていけないことは、ユーロはスイスに対し数々の問題を提起したが、何の解決法も与えてくれなかった点ではないでしょうか?

5)メルケル首相が言うように「ユーロが正しい道を歩んでいる」と証明されたからスイスはユーロを選んで上限設定した訳でもなんでもないと思います。スイスは対ドルで上限設定することは100%可能だったでしょうが、貿易相手地域として最大のユーロを選択しただけのこと



もしユーロが正しい道を歩んでるのなら、どうして対円で10年ぶりの安値に接近しているのか説明して欲しいですね。

しかし政治家の方達の為替に対する見解というか理解度というのは、私には全くわかりませんわ....

風邪がますます悪くなったみたいで悪寒がひどくなりました。この文章を読み返す気力が残っていないので、そのまま更新します。間違ったことを書いていたら申し訳ありません。スパに行ってサウナとスティーム・ルーム(蒸気が出る部屋)に入ってきます。帰宅後は 借りた昔~~の韓国ドラマのDVDを見て早く寝ます 

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[ 2011/09/15 21:52 ] マーケット | TB(-) | CM(7)
1兆ユーロてwww
SNBてそんな介入資金どこにあるんですか?
リーマンショックから約半年間の介入で1兆円超も損出してあんなに避難されたのにw
日銀でさえ介入資金は40兆円程度ですけど。
[ 2011/09/16 00:33 ] [ 編集 ]
ありがとうございました
N20様

ご丁寧な解説をしていただき、ましてや、記事にもしてただき、心から御礼申し上げます。

スイスの件は上記の内容で理解できました。ペッグ制ではないこと、ただ上限を設定し、下限は市場任せという事で、片道ペッグ制みたいなものですね。

香港ドルなどの対米ドルペッグ(カレンシーボード)通貨は、ペッグ相手が米ドルというだけなので、米ドルに対して価値が騰がった日本円や人民元などに対して、経済力関係なく香港ドルが下落するので、健全な自由市場ではないですね。私が香港に居た時の香港ドルは、人民元よりも高かったのですが、今やパリティーを通り越して人民元のほうが額面的には高くなっています。おかげで、大陸よりも香港のほうが一部物価が安くなり、逆流現象すらでています。

対一国だけの通貨に変動幅を設定するのはリスクですので、複数通貨に対して複雑に連動させながら変動幅を制限したバスケット制を採用している国(露・ルーブル、シンガポール・ドル、マレーシア・リンギ、中国大陸元)がありますね。

私も欧州各国へ行った際、変動通貨なのにハンガリーホリントなどはあまりうごかななぁ~、と感じたことがあるのですが、規模が小さいと変動幅が小さくなるものなのでしょうか。因みに、HUFは、対ユーロでここ数日けっこう下落しています。何かの予兆でしょうか。

あと、スイスフランはお隣リヒテンシュタイン公国でも使用されています。もちろんユーロも流通しています。お互いが等価になったら彼らはどう感じるのでしょうかね。リヒテンスタインの三分の一は銀行業で喰っているらしいですが、この国の立ち位置は微妙ですね。

モンテネグロのように正式なユーロ圏ではないのにユーロを流通させているところもあるし、通貨政策はユーロ圏のみならず、東欧諸国にも大きな影響がありますね。

最後に、上の方と同様、SNBの介入資金ってどこから調達するのでしょうか疑問に思います。金でも調達するのでしょうか。それにしても恐ろしい金額ですね。ファンドに攻められる前に、米ドル高トレンドになればいいですね。

[ 2011/09/16 01:48 ] [ 編集 ]
ドル独歩高の可能性について
いつもためになる情報ありがとうございます。 

JPMの佐々木融氏が、ヨーロッパの混乱を受けてドル独歩高の可能性を示唆しています。

ノワイエ仏中銀総裁は米MMFが欧州から資金を引き揚げている。
欧州の全ての銀行がビジネスモデルを修正が必要「全ての欧州銀がドル建ての取引を見直す必要があり、仏銀も例外ではない」とし、「輸出融資などの中核業務を損ねることなくバランスシートを縮小する必要がある」と述べています。

もしよろしければ、ジャパン・プレミアが問題になった時期にロンドンのフロントで活躍されていた松崎さんに、現状分析等々コメントをブログで拝見できれば幸いです。
[ 2011/09/16 18:31 ] [ 編集 ]
Kamiyamaさん
今日は!
スイス中銀の話しですが、輪転機廻しまくってスイス・フランを刷ってそれでユーロ購入すると私は理解しています。挙句の果てに非不胎化ですからジャブジャブにお金が市中に回りまわることになるでしょう。個人的にはそんなことをしたら、将来のインフレ懸念が非常に心配されるのですが、今はまだデフレ状態のようなので先の心配はまたその時に...ということなのでしょうかね?
[ 2011/09/18 19:48 ] [ 編集 ]
Kemononnさん
ブログ訪問ありがとうございます。
JPMの方の相場観は全く知りませんが、市場ではドル高を想定しているところもたくさんあるようです。過去記事でもドイツ銀やPIMCOの例を出しました。

ジャパン・プレミアムの時と今回のユーロ圏債務危機問題と簡単に比較出来ない点は、将来のユーロの形が分からないところにあると思っています。ギリシャやポルトガルが抜けて現在のユーロのまま継続するのか?逆にドイツがユーロを抜けるのか?2つのユーロになるのか?など考えるだけで、ますます混乱してきます。
いつか何らかの解決が見えてきた時点でまた記事にしたいと思っています。
[ 2011/09/18 19:53 ] [ 編集 ]
ご返答ありがとう!
輪転機廻しまくってスイス・フランを刷ってそれでユーロ購入&非不胎化はBOJ・FRB・ECBもやってるので分かりますが資金(=中銀の負債)を供給する=対の資産を購入する必要がありますね。SNBの場合ユーロを買って何で運用するかが疑問だったのです。
金は金利が付かないし、今上昇してる米国債はドルだし、中銀が商品相場は金利もつかないし全く論外、まさかPIIGSの国債買って助けるわけでもあるまいしw

うまく相場が反転すればいいけど、失敗してパリティ割れなら含み損は大きくなるしフランより価値の無いユーロなんて、それ以上買う理屈が立たないと思いました。

それと、以前イングランド銀行がソロスにやられたように、たかがSNB規模の介入で相場のトレンドが動くわけ無いとwww
[ 2011/09/23 18:07 ] [ 編集 ]
Kamiyamaさん
今日は!
介入で増えたユーロですか...安全志向でドイツやオランダ国債でしょうかね...

どうして一気に1.23ミドル越えさせて1.25くらいまで損切を巻き込んで上げさせないのか、不思議です。
[ 2011/09/23 22:14 ] [ 編集 ]
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プロフィール

N20   (松崎美子)

Author:N20   (松崎美子)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18ヶ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年 シティーにある米系投資銀行に転職。肉体的・精神的に限界を感じ、2000年に退職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。たまたま英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

口座残高ゼロ経験あり

セントラル短資FX (株)さんで 連載スタート
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