昨日格付け大手:ムーディーズは、
スロベニア の格付けをBaa2から2段階引き下げ

投機的等級 (ジャンク債扱い) のBa1

アウトルック (格付け見通し) は’’ネガティブ(弱含み)''としました。
キプロスの次は、スロベニアだ

と言われているくらい、EU/IMFからの金融支援要請候補であった同国ですが、他からの金融支援に頼らず自力で国債入札により資金調達をするため、昨日ドル建て国債指定銘柄の起債実施に踏み切ったのです。

詳しく言いますと、実際に5年物と10年物のドル建て債の入札が実施され、60億ドルの応札がありました


しかし運が悪いことに、応札があった瞬間、スロベニア財務省へ格下げの連絡

が入ったようで

即刻入札を中止する

という事態になってしまいました


その直後に、格付け大手:ムーディーズが格下げを発表

ちなみに、他の格付け大手:S&Pとフィッチの格付けでは、投資適格級のA-が維持されています。
(A-から4ノッチ格下げされると、ジャンク債扱いとなる)
ユーロ圏17ヶ国のうち、ムーディーズがジャンク級に引き下げたのはこれで5ヶ国目。
(ギリシャ、キプロス、アイルランド、ポルトガル、スロベニア)
*スロベニアの政治的背景ロンドンに住んでいても、スロベニアに関するニュースは、そう簡単に入って来る訳では、ありません。ましてや、日本となれば、絶望的

かもしれませんね。ですので、この国が抱えている問題をザッと説明したいと思います。まずは、政治的な問題から行きましょう


2011年12月に実施された総選挙で、第一党に躍り出た新党:積極的なスロベニア党が連立工作に失敗

その結果、第2党であったスロベニア民主党が連立の長となり、2012年2月よりヤンシャ首相率いる連立与党が政権を担ってきました。
他のユーロ加盟国同様、この国も緊縮財政策を強行し、国民の不満は頂点に達し

連日抗議デモが続いておりました。そこにきて、ヤンシャ前首相による汚職疑惑が発覚

したことを受け、昨年秋から冬にかけて、連立を組む複数の政党が政権を離脱。スロベニア議会は今年2月27日にヤンシェ前首相の不信任決議を採択。そして2013年3月20日、第1党:積極的なスロベニア(中道左派)のブラトゥシェク党首が首相となり、新政権が発足したばかりです。
*スロベニアの金融セクターの問題点スペインと非常に似ており、不動産ブームのバブルがはじけ

同国の銀行は住宅ローンの焦げ付きなどに代表される巨額の不良債権

を抱えています。そのため、政府としては、銀行への資本注入が急がれますが、その財源をどこから確保するのか

が、問題となっていました。
スロベニアの銀行はが抱える不良債権の規模は70億ユーロと言われ、これはGDP比20%に相当

金融セクターの総資産はGDP比150%程度で、キプロスの800%と比較すると規模がだいぶ小さいのが特徴です。
*キプロスの次はスロベニアなのか?少なくとも、つい数週間前までは、こちらのマーケットでは、キプロスの次はスロベニアかもしれないね...

と言われていました。しかしここに来て、イタリアの組閣が決まったり、キプロスの金融支援受け取りに対する条件内容が可決されたりと、不透明感が徐々に払拭されてきたため、スロベニアに対する関心が薄くなっていたのも事実です。
とりあえず、こちらのマーケットの見方としては、スロベニアの銀行が抱える問題は、銀行セクターの規模そのものよりも、不動産バブル崩壊による資産の質低下にあると言われており、国営銀行の不良債権を買い取り民営化に道を開くための「バッドバンク」設立

景気後退の中での銀行システムの資本増強のためには、市場での資金調達が不可欠だと見られています。

IMFによると、同国は財政補助として30億ユーロ、そして銀行の資本増強に10億ユーロ

合計40億ユーロが最低限必要であるとされていますが、緊縮財政策の見直しを掲げている新政権に対し、果たしてEUやIMFが支援に合意するのか?は非常に困難とも思われます。そうなると、同国は入札による資金入手に頼らざるをえません。

しかし運が悪いことに

最近になって判ったことですが、今年6月には約10億ユーロ規模の短期債の償還が控えており、銀行への資本注入に加え、償還分の資金確保の必要性が表面化しました

そのため、昨日同国はドル建ての起債に踏み切ったのですが、ムーディズの格下げにより、急遽中止に追い込まれったのです

なんか、思いっきり気の毒なストーリーですね、これ...

今後入札により資金確保が出来ない場合、もしEUやIMFに金融支援を要請することになれば、当然その見返り条件としてギリシャやキプロスのような過酷な緊縮策が求められると予想されます。
*10年物国債利回り 6%台ギリシャやポルトガルなどが実際の支援要請に動くきっかけとなったのは、国債利回りが7%を超えてしまい、国債の新規発行コストが跳ね上がり、自力で財政運営が不可能となり、やむを得ず支援要請に動いた経緯があります。つまりこの
「国債利回り7%」というのは、ユーロ加盟国が支援要請に動くひとつのベンチマーク化しており、今回のスロベニアも10年物国債利回りが7%台へ行ってしまうと、同様の扱いを受けるのではないか?と見られています。
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