3月23日に発表された2011年度予算案。国民は過去1年で15%値上がりしたガソリン代に頭を痛めており

政府は
ガソリンに対する燃料税の1ペンス引き下げ を予算案に織り込みました。当然その財源(20億ポンド)をどこかから引っ張って来なければなりません。現政権は北海油田付加税 Supplementary petroleum duty(SPD)に白羽の矢を当て

現行の20%税率を32%へ上げると発表。
しかしこの発表を受け、今週に入ってから北海油田の新規開発を考えていたノルウェーのスタットオイル、仏トータル、英セントリカ、そして小規模な英石油会社:バリアントが次々と計画していた新規開発に待った!

をかけ始めたのです

。 理由としては、全社がオズボーン財務相による突然の増税発表により開発後の採算が取れなくなる可能性を挙げています。スタットオイルはスコットランド北部シェットランド諸島の南東沖合にある2鉱区の石油・天然ガス田開発で約100億ドル規模の開発を予定していました。トータルは新規油田開発計画用に1億7,000万ポンドを割り当てていたそうです。英石油会社:バリアントは9,300万ポンドの油田開発の中止を決定しています。
*オズボーン財務相の対応 
頑なです、このお兄さん。最近の高騰する原油価格により原油各社、原油・ガス開発会社は相当過剰な収益

を得ている筈である。価格高騰の煽りを受け苦しんでいる国民を助ける為にも、収益で潤っている石油会社がその一部を還元するのは当たり前だ!

という態度を変えていません。
ただしこれが原因で北海油田への開発投資が減少し続けないよう、原油価格が1バレル当たり75ドルまで低下すれば税率を引き下げる という条件をつけました。
*北海油田からの収益に掛かる税金私も今回の事があるまで、北海油田のことなど考えた事もありませんでしたし、ましてやその収益に対する税率に関しては1ミリも頭の中にありませんでした。調べてみたらスゲェ~~~



税金取られるんですね、これって.... こんなに取られても油田開発する価値があるのかよ

と正直に思いました。
英国政府は国際収支の悪化と経済の停滞に悩んでいた1970年代に、石油会社の過剰利益を吸い上げる+政府の税収増加 2つの目的で、1975年に原油税法導入。その後何度も税率改正や新税導入/撤廃を繰り返して来たようです。これは英財政研究所 (IFS Institute for Fiscal Studies)が作成した
過去の税率一覧表です。左から順に説明しましょう

1) Petroleum revenue tax (PRT) 北海油田特別税
2) Corporation Tax 法人税
3) Supplementary petroleum duty(SPD) 北海油田付加税
4) Royalties ロイヤルティ

1992年以前に開発を認められた油田に対する課税率
北海油田特別税(PRT) 50%
法人税 30%
北海油田付加税(SPD) 20%

1992年以降に開発を認められた油田に対する課税率
法人税 30%
北海油田付加税(SPD) 20%
この表に「32%」と赤く書いた部分が、オズボーン財務相が発表した「増税」です。この増税を収入源として、私達消費者が支払うガソリン代が1ペンスカットになりました。
今回のスタットオイルの油田は「1992年以降に開発を認められたもの」というカテゴリーに入るため、本来であれば「法人税30%+付加税20%」 が適用

今回の増税発表により「法人税30%+付加税32%」 となるので、ノルウェーは二の足を踏んだということになってます。
しかしFT紙によると、ノルウェー国境内に属する北海油田に対する課税率は78%となっているようで、それに比べたら英国側の「法人税30%+付加税32%」はまだ安いという議論もあると書かれています。
*今回と2005年の増税2005年秋 当時の財務相であった労働党:ブラウン氏は予算編成方針で北海油田付加税(SPD)を10%から20%へ一気に2倍に上げました (
表の青丸の部分)。ブラウン財務相は 「ハリケーン・カトリナの影響で原油価格が高騰しているので、石油各社は増税に十分対応出来るから。」と税率引き上げの理由を語っていました。しかし北海油田開発にかかわる人達への事前の相談もなく増税が発表されたので油田開発関係者にとっては寝耳に水

今回のオズボーン君の増税もこの時と同じらしく、関係者にとっては寝耳に水



北海油田開発に詳しい関係者の中には、今回の増税に対しては開発各社それなりに対応出来るだろうが、今回もまた自分達に全く相談せずにいきなり増税を押し付けられた事に腹を立てている

のではないか?という意見もあるようです。
それに対し、今回の増税で将来の開発中止決定が相次いでしまうようなことになると、短期的な心配事

としては失業者増加がありますが、もっと中長期的な視野に立った場合、現在世界がもっとも必要としているエネルギー開発そのものに待った!

がかけられてしまう危機感が浮上してきます。同時に 北海油田用に確保していた開発費を他の地域(中東、ロシア、アフリカ、アジアなど)の開発費に充てる動きも当然出てくるでしょう。
アフリカやロシアでの油田開発はそれらの地域の地政学的リスクや政府の突然の増税通知などのリスクと常に背中合わせだそうです。それに比べて地政学的リスクがない北海油田はまさに天国

だったのかもしれません。しかしここに来て 2005年と今回2度に渡りべらぼうな増税を英政府に押し付けられた

増税発表による収入減予想を受け、自社株が売られる という悪循環

に耐えなければならない北海油田開発に積極的だった企業達にとって、北海油田開発に対する考え方を変えさせるきっかけになってしまったのかもしれません。
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