水曜日に野田財務相関連記事で少し触れたアイルランド問題。自分自身の整理の為にも、もう一度 順を追ってちゃんと書いてみる事にします。
7月30日アイルランド中銀が四半期レポート発表。そこで2010年度の政府財政赤字対GDP比は18.7%まで膨れ上がる

という見通しを明らかにしました。その理由として挙げられたのは、国有化された2つのアイルランド系銀行の救済資金の負担増。
8月10日欧州連合がアイルランドに対し、アングロ・アイリッシュ銀行への追加支援総額 「245億ユーロ」 を承認

しました。この銀行は2008年の不動産ブームに乗っかり商業用不動産物件に対する融資を拡大しすぎて その焦げ付きで苦しんでいる

状態。
少し説明を加えますと、アングロ・アイリッシュ銀行は2009年1月に国有化、その時点で政府は40億ユーロの救済費用を投入

2009年3月に追加支援として 104億ユーロを投入

今回は3回目の救済に関して欧州連合(EU)からの承認待ちの状態でした。
どうしてEUからの承認が必要だったのか?

と言うと、2009年国有化の時点で アイルランド政府はEUより 「220億ユーロまでの救済を認める」 という承認を取り付けました。しかし今回の救済規模は83億ユーロとされており、合計3回の救済支援総額は227億ユーロ

つまり2009年当時の承認総額220億ユーロを上回ってしまう

為、新たな承認を必要としていました。ちなみにアングロ・アイリッシュ銀行への救済/支援総額227億ユーロはアイルランド国民総生産(GDP)の約15%

本日の報道によると第3回目の支援額は当初の83億ユーロから最大100億ユーロへと増額される可能性が出てきたようで、ますます財政赤字が膨らむ公算
8月11日・前日10日のEUからの承認を受けて 「アングロ・アイリッシュ銀行への支援規模が当初の予想を上回った

アイルランドの財政赤字問題に再び懸念が強まる

」 との思惑が拡がり、アイルランド国債10年債の利回りは 4.9%台から5.5%台へと急上昇

。 これにより同国債とドイツ国債のスプレッド差も1ヶ月ぶりの高水準まで拡大
・欧州中銀(ECB)が突如として7日物ドル資金供給オペを約2ヶ月ぶりに実施し、市場を驚かせました

。供給金額は4億3,000万ドル (利率 1.18%)、2つの銀行がこのオペに参加したそうです。この2行がどの銀行なのか?もしかしたらアイルランド系銀行なのではないか?ドルの調達が出来なくなっているのではないか?などという噂が市場を駆け巡りました。私は先月行われた「ストレス・テスト」の結果について非常に懐疑的

でしたが、このオペを通じてドル資金の供給を受けた銀行はストレス・テストに合格した銀行と理解して構わないと思うので、どうして今更ドルオペなんじゃ

と疑惑だらけになりました。
・昼過ぎだかに、欧州のいくつかの中央銀行と欧州中央銀行(ECB)からアイルランド国債のプライス照会があり、ECBとアイルランド中銀は実際にアイルランド国債2年債を買っているという噂が流れました。
8月12日・アイルランド財務省が短期証券(T-bill)の入札を実施。
短期証券期間:6ヶ月物、8ヶ月物
金額: それぞれ5億ユーロづつ
平均落札利回り:
・6ヶ月物 2.458% (2週間前に落札した時の平均利回りは 1.367%)
・8ヶ月物 2.810% (2週間前の落札時 1.80%)
応札倍率:
・6ヶ月物 3.6倍 (2週間前の落札時 2.8倍)
・8ヶ月物 3.1倍 (2週間前の落札時 3.4倍)
この入札結果が出てすぐに アイルランドとドイツ国債の利回りスプレッドは若干縮小
・前日同様、ECBはアイルランド国債価格のプライス照会をし、2年債より短めの債券を少額購入したという噂もあります。
*今後の入札予定来週8月17日に 2014年満期物と2020年満期物の2つの入札が実施される予定
*ここからのアイルランド国債動向アイルランド政府は2010年度国債発行総額を200億ユーロと設定しており、幸いな事に

本日までにそのうちの85~90%を入札済み

。 今後 発行総額を緊急に増額しない限り、アイルランド国債価格の大暴落は防げると予想する市場参加者が多いようです。
しかし ギリシャ危機が起こった時のように、アイルランドからPIIGS諸国へ再度感染しないとも限りません。ここからのイールド・スプレッド動向は要注意

と言ってよいでしょう。
もし この記事がお役に立ちましたら 3段攻めポチッ

御願いします!
人気blogランキングへ
にほんブログ村
こんな嬉しい賞を頂きました。受賞に恥じないよう 頑張ろうと思います。応援 よろしく!