英2010/11年度予算案が発表されました。主な内容は以下の通りです。
英景気2010/11年度GDP予想 +1.0~1.5%
2011/12年度GDP予想 前回(2009年12月に発表された予算編成方針)予想 +3.25~3.75% ⇒ 下方修正 +3.0~3.5%
2012/13年度GDP予想 +3.25~3.75%
借り入れ額2009/10年度 借り入れ額 前回予想 1,780億ポンド ⇒ 下方修正 1.670億ポンド (対GDP比 11.8%)
2010/11年度 借り入れ額 1,630億ポンド (対GDP比 11.1%)
2011/12年度 借り入れ額 1,310億ポンド (対GDP比 8.5%)
2012/13年度 借り入れ額 1,100億ポンド 〈対GDP比 6.8%)
2013/14年度 借り入れ額 890億ポンド (対GDP比 5.2%)
2014/15年度 借り入れ額 740億ポンド (対GDP比 4.0%)
公的債務対GDP比 2009/10年度 54% ⇒ 2014/15年度 75%へ上昇
(詳細は 下の表をご覧下さい)
中小企業関連・25億ポンド規模の補助
金融機関関連・特別ボーナス税の税収は 当初 予想されていた10億ポンドの2倍に上る20億ポンドに達した
・銀行口座を持てない人 100万人に対し 銀行口座開設保証
・国営化されているRBS と ロイズ銀行は 中小企業を対象に 940億ポンドの貸付を行う
雇用関連・24歳以下の失業者に対する 6ヶ月間の職業訓練手当て 2011年3月終了 を 2012年3月まで延長
・各省勤務者の30% (15,000人対象)をロンドンから 地方へ移動させる ⇒ 5年間で 110億ポンドの歳出削減
・公務員給与 2011年度から2年間 1%上昇
住宅関連・はじめて住宅を購入する人だけを対象に 250,000ポンド以下の不動産に対する印紙税を撤廃(2年間の時限措置)
・100万ポンド以上の不動産売買時の印紙税を 5%に上げる
現在は 50万ポンド以上の不動産売買時に 4%の印紙税がかかるのですが、今回の予算案からは 100万ポンド以上の不動産に対してのみ 5%印紙税を適用
環境保護関連・低炭素社会に貢献する企業/業界の投資として 20億ポンドの枠を設定
年金、児童手当関連・年金受給者に対する暖房費補助を 更に1年延長
・2012年度より 子育て世帯への税控除 4ポンド
燃料、アルコール関係・ガソリン税
当初は 一気に3%上げが予想されていましたが、予算案では 1%ずつ 3回に分けて行われる事が発表されました。まず 来月(4月)に1%、半年後の10月に 1%、そして 年明けの来年1月に 1%という形。
・サイダー税
どうして サイダーを標的にしたのか知りませんが この日曜日から サイダーに対し インフレ率+10% の増税決定
・ワイン、ビールなどの(サイダー以外の)アルコール税
日曜日から インフレ率 + 1%の増税、2013年より 更に 追加増税として インフレ率 + 2%の増税
・タバコ税
日曜日から インフレ率 +1%の増税、2014年まで 毎年 インフレ率 + 2%の増税
総選挙直前の予算案ですので 有権者に擦り寄る

内容の予算案となるか または その反対に 「労働党は景気回復/赤字削減に断固として戦う」

という強い姿勢を示すか の どちらかに傾き易い筈。しかし 今回の予算案は それぞれの丁度 中間くらいに位置する内容となった印象を受けました。つまり 有権者にとって有利になるような「お土産」がない代わり 赤字削減や景気回復に大きく寄与する内容も織り込まれていません。
最大野党である保守党は 総選挙後 政権を取った場合は 投票日より50日以内に緊急予算案を発表すると公言しています。たぶん この予算案の内容を見た限りでは 労働党が もし 総選挙で勝った場合 改めて新予算案を発表する公算でいるとも考えられます。
ここで 素朴な質問が ひとつ

という事は 一体 いつになったら 本気の予算案が国民の前に提示されるのか

これは 今後 英国のソブリン格付けに関する決定を左右する大事な要因となると思っています。
予算案発表のライブTVを見ていて 一番 驚いた点

は、(2009/10年度のGDP予想は 妥当) 来年以降のGDP予想が あまりにも楽観的過ぎる事でした。
2010/11 1.0~1.5%は まぁまぁの線

2011/12 3.0~3.5% マジ?

2012/13 3.25~3.75% 勝手にしたら?

これだけのGDP押し上げ要因が 一体 どのセクターから来るのかが 検討もつきません。所得税最高50%が適用される為 高額所得者であるシティーのトレイダー達は 欧州大陸などへ移動

します。ポンド安による輸出/製造業界に期待しても 果たして ここまで頑張れますかね?
来年度以降の政府借り入れ額予想は この楽観的なGDP予想

をベースとして計算されているでしょうから 実際の借り入れ額 そして 対GDP比率は 政府予想よりも増加すると見るのが妥当と考えています。
総選挙後 どちらの政党が政権を取っても そこで新たに発表されるであろう予算案で 真っ先に増税対象となり得るものとして 譲渡所得課税 (キャピタル・ゲイン税) と VATがあります。特に 譲渡所得課税は 2008年度より 一律 18%となっている為、これが 18%でいる間に 譲渡所得課税対象となる資産 (株式、土地、建物、一部のビジネス、高価なアンティークや宝石

など)の売却が加速する可能性があります。
2年間の時限措置とは言え はじめて住宅を購入する人を対象に 250,000ポンド以下の不動産に対する印紙税を撤廃することは 不動産市場だけでなく 住宅建築業界にも朗報

だと考えています。しかし この譲渡所得課税上げを国民が勝手に先取りして 投資用の不動産売却が加速する懸念は捨て切れません。その場合は 不動産市場全体は 上げもせず下げもせずになってしまいますね

ダーリング財務相が予算案発表を終えて 自分の席に着いた途端 英国債の投売りがありました (イールド上昇 下のチャート参照)

これは 赤字削減を優先しない予算案であった事に失望した国債売りだった と言われています

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