ごっつぁんです。その2に参りましょう
まずは その1で説明した財政安定化規律に於ける新たな財政ルールをもう一度復習します
<新たな財政ルール>
ゴールデン・ルール
・景気の循環を通じて、政府の借入れは投資目的に限り行い、国債発行額は純投資額(グロス投資額―減価償却)を超えてはならない。
サステイナビリティ・ルール
・景気の循環を通じて、ネットの公的債務残高を 対GDP比で安定的かつ慎重なレベルに保つ。
◎サステイナビリティ・ルールに関しては、現在 政府は、ネットの公的部門純債務残高が対GDP比で40%以下のレベルにあることを目標としています (これは、大蔵省の公的サービス合意において明らかにされているものであり、何らかの法的意思決定を経たものでは ありません)果たして GDPの40%というのが どのくらいの規模なのか知る為に 英国のGDPサイズを調べてみました。ウィキペディアによりますと 2007年度GDPは 2兆7,720億ドル、単純計算で ポンド/ドル 2.0000で計算すると 1兆3,860億ポンド です。上記のサスティナビリティ・ルールを適用しますと GDPの40%=5,540億ポンドがネットの公的部門純債務残高の上限になります。
アッ、ちょっと待ってください。今 英統計局のホームページをうろついていたら 見つけました。
2008/9年度ネットの公的部門純債務残高対GDP比40%の上限 5,810億ポンドだそうです。逆算すると 英国GDPのサイズは 1兆4,525億ポンドとして計算していますね。
で 言いたかった事は 先週金曜日(18日)に発表された6月分PSNB (Public Sector Net Borrowing) 公共部門純借り入れ高は92億ポンド、ネットの公的部門純債務残高は5,553億ポンドとなり 対GDP比38.3%と 上限40%へ大接近。
ちなみに 1980年代半ばから現在までで ネットの公的部門純債務残高対GDP比 最大は 43.8%(1997年度)、最小は 29.8%(2002年度)という数字が 統計局のホームページに書かれています
ここで問題なのは
ネットの公的部門純債務残高対GDP比が40%を越える事 ではなく 政府が40%上限を 更に上げるか否か なんです。
その1にも書きましたが ゴールデン・ルール、サステイナビリティ・ルールともに 「景気の循環を通じて」達成しなければならない とされています。すなわち、これらのルールは毎年厳密に達成されなければならないというものではなく、景気の循環を通じて見た場合に、過去の財政状況の分析の上、及び将来の財政見通しの上の双方で達成されていなければならないということを意味します。次期総選挙を2010年(6月3日以前に実施)に控え 政府労働党は 増税や歳出削減を積極的に行なうとは到底思えません。だから 少しくらいGDP比が40%を越えたとしても なんだかんだ言い訳して終わりでしょう。特に 世界的な低成長率時代突入の現在 税収は低下し 借入額が増えてしまう事に ある意味では英国全体が不感症になるかもしれません。 しかし ネットの公的部門純債務残高対GDP比率を上げるという事は 将来 景気回復した場合にも 必要以上の借金をしながら国家財政を取り仕切る事になる危険性があります。
とりあえず どういう形(GDP対比率を40%以上にするか否か)になるにせよ 財務省は現在 土台となる資料作りの最中で 仕上がるのが早くて9月末になるそうです。
18日にPSNBの数字が発表された後 FT紙が「英財務省がブラウン英首相の財政規律を変更し、政府借入を増やすことを検討」と報じました。その後、英財務省はその報道を「全くの憶測」と否定しましたが そのまた翌日 ダーリング財務相は この比率変更について 既に数ヶ月に渡り 協議していると漏らしてしまい ポンドメチャ売りされました
次回その3は この件に関する私の個人的な意見を書かせて頂きます
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