昨日に引き続き 本日は 2007年夏以降の不動産市場低迷について書きます
過去10年で約3倍になった住宅価格は 2006~7年に天井を打ちましたが 今 思い返すと 当時は このまま永遠に上昇するのではないか?という錯覚

を起こさせるほど住宅市場は魅力的に見えました。1990年代までは 平均賃金の3.5倍が住宅価格の妥当な値段とされていましたが この住宅ブーム時には 平均賃金の8倍というレベルにまで 住宅価格が跳ね上がってしまいました。逆の見方をすれば それだけの価格の住宅が取得出来るほど無謀なレバレッジを効かせた住宅ローンの組み入れが可能だったんですよね。当然 1990年代と比べ住宅ローンの種類も増え 以前 ここのブログで紹介した
Aさんのような個人不動産投資家向けの<住宅ローン金利のみ支払い専用ローン>も登場。
住宅価格はうなぎ登り

に上昇していたので 英国民全体が自宅購入時に設定した住宅ローンの組み換え(前述のAさんのような形で 借り入れる)をしました。本来の<組み換え>目的は 新規不動産購入の頭金にする為なのですが
使用目的が限定されていないので 自宅の増改築や 車

・旅行

といった消費にまわす等 人それぞれの使い方で英経済を潤してくれました。言い換えれば 犬

でも猫

でも自宅の価値が住宅ローン残高以上であれば その差額を利用して簡単に住宅ローン組み換えにより<身分不相応の>借金が出来という訳です。当然 消費熱は高まり 欧州で最高の成長率を記録しましたが、一部の人達は 住宅価格が上がる度に借り入れを繰り返し 現在 にっちもさっちも行かなくなっている

ようです。
2007年夏が終わり 米国でサブ・プライム問題が発覚。その影響をまともに受けた英国の金融機関(住宅ローン会社も含む)は 安く魅力的な金利で市場から資金を調達出来なくなり 貸し出し枠を狭めると同時に貸し出し金利を上げました。
1年前の2007年夏には なんと 15,600種類の住宅ローンがありましたが 現在では 3,775種類にまで減少しています。イケイケローンを組んでいたノーザンロックが国営化されたのは 皆さんの御記憶に新しいと思います (このブログでの ノーザンロック関連記事
その1 その2 その3 その4)
今回の不動産市場低迷の特徴は 1992年当時と違い 住宅取得熱は依然として高い点です。しかしながら 住宅ローン貸し出し条件が極端に厳しくなった=住宅購入希望者に対し ローンを組んでくれる金融機関がない という悪循環で 買いたくても買えない。同時に 待てば もっと安くなるので 急ぐ必要がない。
ネガティブ・エクイティの件数は 上昇し続けていますが 現時点で既にネガティブ・エクイティになってしまった人達というのは アホですね。たぶん そういう人達は 1)法外な頻度で住宅ローンの<組み換え>を繰り返したザマーミロ軍団 2)住宅価格が頂点に達した時に購入してしまった運の悪い人達 のいずれかと思われます。1990年代中盤から2002年くらいまでに購入した住宅であれば(地域にもよりますが) ここから50%不動産価格が下落しても まだ ネガティブ・エクイティには ならない筈ですから
私が 今回の不動産市場低迷の方が 1992~3年の暴落時よりも 深刻だと思うと言った理由は イギリス国民全体が住宅価格上昇を見込んで 住宅ローン借り入れ金額を増やしてしまった為 (住宅価格が下落したら) ネガティブ・エクイティの比率が激増し 住宅ローンやクレジット・カードの返済不可能者が 今以上に増え 金融機関の収益を圧迫します。そして (住宅ローン組み換えにより) いとも簡単に借金が出来る事を知ってしまった英国人が 昔のように 貯蓄をし まともな生活に戻れるのか 正直 不安です。一部の人達は 住宅ローン借り入れだけでは間に合わず クレジット・カードによる借り入れにも手を染めているようです。一度 価値観が変わってしまった人間を もとに戻すのは 容易ではありません。普通の生活をしていれば ネガティブ・エクイティにならずに済んだ筈の人が 廻りの雰囲気に流され 大船に乗った気持ちで住宅ローン組み換えをし いい思いをしてきましたが、現在 そのツケが どれだけ高くつくか判断する金融知識も持たず右往左往している。それが 今回の不動産市場低迷が より深刻であると判断した理由です。
連日 不動産関連企業の人員削減が 発表されていますが、まだ それが他へ移転していません。景気減速が本格化し 雇用状況悪化が鮮明になった場合 それが引き金となり 英国全体 ドミノ倒しのように 崩れていく危険性が高いと予想しています。しかし それが いつになるのかは 正直 全く 判りません
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