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ギリシャを巡るPSIとCACsについて

読者の方からこのような質問をコメント欄を通して頂きました。
私自身、この報道は眼にしたのですがあまり意味がよく判らなくて  後回しにしていたものです 
これを機会に自分なりに調べてみたので、その結果を書いてみます。

ギリシャの民間債務の再編協議がうまくいくのか気になっているのですが、12日付でロイターが「ギリシャ政府は、民間債権者との債務交換協議の難航を受け、遡及的な集団行動条項(CACs)を適用する可能性がある」と報じています。ギリシャの既発債には集団行動条項は含まれていないのだと思っていましたが、遡及適用するなんてことは可能なんでしょうか?契約の常識からすると、どういうことなのか理解できないのですが・・・もし詳細がわかりましたらご教示ください!

*結論からはじめます

ギリシャの既発債に集団行動条項(CACs)を適用することは可能だそうです。
もっと細かいこと言ってしまうと、「民間部門が保有している既発債のうち93%がギリシャ国法により規定されているため、発行条件の変更や追加は議会での承認が得られれば可能である」と書かれていました。

(過去記事で 集団行動条項(CACs) について書いたものがありますので、是非参考にされてください)

*どうして今、CACsなのか?

先ほどの記事にも書きましたが、ギリシャの債務削減を目的とした同国の国債に対する民間部門関与(PSI)の協議が難航しています。

難航している理由のひとつには、ギリシャ国債最大の保有者である欧州中央銀行(ECB)の取り扱い方が不透明である点が挙げられています。ちなみにECBのギリシャ国債保有額は450億ユーロと推定されています。

ECB理事会後の記者会見の席で、ドラギ総裁だけでなくコンタシオ副総裁までもが「PSIが適用されるのは、あくまでも’’民間部門’’であり、ECBは適用外である。」と発言しています。それに加え、PSIはあくまでも’’自発的’’な参加となっているため、民間部門でないと自分達を位置づけるECBが自発的にPSIを受け入れる用意があるとも思えない点です。

最大の保有者であるECBが債務交換に応じないとなると、いくら残りの民間部門でヘアーカット率50%を適用したところで、既存のギリシャ国債の残高の減少率は予定よりずっと少ないままで終わってしまう   2020年に公的債務残高対GDP比120%達成は無理になってしまうかも 

ただし一部の投資家は、ECBも自分達投資家同様、全く同じように流通市場でギリシャ国債を購入したのだから、どちらも「民間部門」という立場となるのではないか?もしそれが正しいとすれば、ECBは損失計上を逃れ、自分達は損をかぶらなければいけないのは、非常に不公平であると怒って  います。

IMFは既にギリシャ既発債に対する遡及的なCACs適用案を認める方針であると伝えられています。

*PSIとCACSの違い

PSIは民間部門だけを対象としているのに対し、CACsを適用した場合、債券保有者のXX%の合意が得られれば、その条件は全ての債券保有者に適用が可能となる点です。つまりECBだろうが誰だろうが関係なく、その債券を保有している全員に同じ変更条件が適用される訳です。

今回の既存のギリシャ国債に対するCACsの合意条件として、債券保有者の3分の2が参加を表明すれば集団行動条項(CACs)の適用が可能になるのではないか?と書かれていました。

*CACsの飛び火 懸念

EUのリーダー達は何度も何度も「ギリシャを取り巻く環境は非常に特殊なものである。現在ギリシャ国債に対して協議されている民間部門関与(PSI)はギリシャにだけ起こることであり、他の加盟国には同じ事は起こらない。」と繰り返して  います。しかしその言葉をまるまる信じている市場参加者は稀でしょう。

そうなると、もしギリシャが既発債にCACsを適用すると決定した場合、他のユーロ加盟国も同様の措置を取るという発想が湧いてくることが考えられ、新たな負の連鎖が起こる危険性が浮上  イタリアも含むPIGS各国の国債利回りが再度急上昇することも考えられます  今度こそイタリアとスペインは本当の’’苦しみ’’と’’危機感’’を味あわされることになるのは間違いないと私は思っています  下手をするとフランスの国債利回りも上昇し、格下げなんてことにもなりかねません。


とりあえず今私が知っている事はこのくらいです。また何か調べて新しく判明しましたら、別途記事にしたいと思います 


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[ 2012/01/13 23:24 ] ユーロ危機 | TB(-) | CM(2)
ありがとうございます
CACsの件、ご教示ありがとうございました!
ギリシャの法律を新たに作って(改正して?)、遡及的に適用するということなんですね。これって、要は借金した側が、一方的に条件を変更できるってことですよね?金を貸した側も、よくそんなリスクをとったものだと思いますが、国債って、そんなものなんでしょうか・・・

あと、CDSとの関係も気になるのですが、もし仮にCACsが適用されると、自発的な債務削減でなく、強制的な債務削減とみなされて、CDSのイベント発生ということにならないのでしょうか?ギリシャ国債を保有しているヘッジファンドはCDSを買っていて、PSIに参加するよりも得をするような気がするのですが。ドイツは、ドイツの銀行がCDSを売っているので、ギリシャ国債がデフォルトとみなされないPSIにこだわったと解説されていましたが、CACsの場合はどうなるのでしょう?
[ 2012/01/14 16:28 ] [ 編集 ]
Abeさん
今の欧州はもう「何でもあり」です。デフォルトにならないためなら何でもする!みたいな....

CDSに関してはまた次回にさせて下さい。
ちょっと現在いろいろな仕事が山積みになってしまって 汗 その中で同時に為替のポジションも取っているので、自分の許容量いっぱいいっぱいになってしまってます 汗

[ 2012/01/17 23:19 ] [ 編集 ]
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プロフィール

N20   (松崎美子)

Author:N20   (松崎美子)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18ヶ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年 シティーにある米系投資銀行に転職。肉体的・精神的に限界を感じ、2000年に退職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。たまたま英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

口座残高ゼロ経験あり

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